| シリーズ | 田外竜介シリーズ |
|---|---|
| 出版社 | 中央公論社 |
| レーベル | C・NOVELS |
| 出版年月 | 1987/11 |
| 初出 | 書き下ろし |
| 解説・感想 | ハルキ文庫にて再刊(2000/09) |
| ジャンル | ホラー |
学園都市の俯瞰図を見るなり想いました。
「こんな奇ッ態な建物のある土地で、何かが起こらないはずがない!!」
そしたらその通り、出だしからいきなり犬神さまですよ。しかもヤバい何だか進化してるっぽいよ…!!
のっけから人を喰らってるし、その「邪悪な力」を利用しようとする存在が絡んでるみたいだし、浜崎デスクさんの言葉じゃないですけど、もうキナ臭さがプンプンしてますよね。
北海道で、一体何が起こっているというのでしょうか。……
敵のその強大さを今は知らず、単身北海道へ乗り込む田外さん。
そう、ディックさん。
『魔術戦士E』を読んだ時は、その格好の描写にどんなやくざな生活を送ってるのかしら、男やもめのひとり暮らしか、とか考えてましたけど、案外そうでもなかったみたい(笑)。
ムル…じゃなかった、ハメットくんという同居人さんがいたんですねー。
存在を知った途端、浮かんだのが、
書き損じた原稿(ディックさんは指もゴツいしそもそもパソコン自体扱えなさそうだから、手書きで済ませてると想う)とかいらない写真とか洗濯物とかが散らばってる部屋で、猫にエサをあげてるディックさん、何だかとってもほほえましいですね。あ、お名前はやはりダシール・ハメットからなのでしょうか…?
そのムルムル…じゃなかった、ハメットくんは、今回はおるすばん。(←…ん? ちょっと待て、別ものになってない!?) いいコでご主人様を待っていてほしいものです。
そして、虹子さん。だごん様作品のヒロイン! 主演作品はまだ拝読しておりませんが、「逆宇宙ハンターズ」や「マジカルブルー」などでお噂はかねがね…(平伏)。
虹子さんもついて行くわけではないみたいですけど、行きがけに手土産(?)を渡してくれたりと、後方支援をしてくれそうな予感。厄介のきわみのような相手だから、多少はその方面の知識が要りますものね。
でも――この一見何の接点もなさそうなおふたりが、どうして友人関係でいるのか、ちょっと興味があります…。
虹子さんが痴漢にあってたところをディックさんが助けた。……でも虹子さんなら、その前に自分でノシちゃいそうだしなぁ。
ディックさんがやくざさんにボコられていて虹子さんが助けた。……いやいや、ディックさんがそんな、どうしてどうして!
何か事件をきっかけに知り合って、実はお互いの住まいが隣同士だと知った。――うん、これがイチバンそれっぽいような気が。ディックさんが虹子さんのもとへ取材に行った、とか。
……って、それどころじゃないですね、ええと。閑話休題。
瀬田寒――。
早くもこの地にやってきたんですね。
先に『旋風伝』を読んでいたから、200年前に新之介さんが立っていたこの地に、200年後の今こうしてディックさんが立っているんだなあと想うと、何だか感慨のようなものが湧いてきました。用件も同じ「犬に用がある」ですし。
ただディックさん、ポイヤウンペ(少年英雄)と呼ぶには少々フケすぎていますけど……と、これは要らぬ謂ですね、失礼致しました。早くも殺し屋さんが登場したり、犬の影もちらちら見えてきましたね。でも、ディックさんにも、がんばっていただきたいものです。
そして、学園都市と近江研究室を訪ねたディックさんですけど。
犬山のおじさん(ワニ頭の杖ときくと、こせこせした某魔術師を想い出してしまうのは私だけ?)や近江局長たちと語らっている合間に改めて地図を見てみましたけど、この学園都市、ホント奇ッ態な構造ですよね。建物はもとより、地形そのものからしておかしいと想わずにはいられません。図書館を囲む道路は眼を縁取っているみたいだし、北のアイヌ塚から瀬田山にかけての道なんて、まるで毛色の模様みたいで……。
一体どういう意図があってこんな学園都市を建造したのかは私もまだ見当つきませんけど、決してデタラメではないはず。
乾さんの言によれば、
「有名な建築家と近江局長の合作ですのよ」
近江局長が関わっているというならまず疑わしいのは彼ですし、それにその建築家も一緒に怪しい事になってきますね。学園都市建設を再計画した殺された犬塚も、直接的にではないかもしれないけどどこかで一枚かんでいるのかもしれない。作中、それらが明るみに登場するかはまだ解らないものの、とりあえずはチェックをいれておきましょう、と。
それにしても……
……気に喰わない。
なーんか、気に喰わないんですよね…。
犬塚・犬飼・犬山・犬丸・乾――これだけ「犬」の人が集まっている。それも学園都市を中心に。そして同時に、みなさん今回の事件には遠かれ近かれ、何らかの形で関わっている人ばかり。これが果たしてまったき偶然なのでしょうか。
む〜…。
――そういえば、ディックさんが近江局長に抱いた印象の中に、お懐かしい人についての記述が含まれていましたね。一度だけの接触でしたけど、某Hさんと見知りあったあの事件から、もうけっこうな時間が経ってるんですね――。
この間に、ディックさんの狂笑癖も完治したみたいですし、そしておそらく数ヶ月後には、猛獣ハンターとしての某Sさんを紹介した記事を探し当てたりもして。……Sさん、ディックさんからのご伝言を覚えてらっしゃるでしょうか。(←静子さん、ちゃんと伝えてくれましたよね?) お互い忙しい身ですからなかなか難しそうですけど、いつかこのふたりのツーショットは実現してほしいなあと想うです。できれば、スニーカーのお坊さんも交えて(笑)。
ついでに5年後には――おっとっと。これはまた、後の話ですね。
警備員室にて。
……。
……。
えろを読むのはやっぱり赤面しつつになってしまいます。キライとかニガテというのではないんですけど、何だか恥ずかしくって…。作品の根幹に関わる、これも大切な部分なんだからと、ちゃんとひと通り読みはするんですけど(苦笑)。
ここで想い出された会話。
「近江先生は、実際のお齢より遥かにお若いですね。どうみても四十代前半というところだ。何か秘訣でもあるのかな」
「さあ、どうですか……でも、本当にお若くって……」
ああ、そういう事……。
ここでいかにもな警備主任さんが登場して雰囲気をまぎらせてくれたのは助かりましたけど、
「あれは……ちょうど七八番カメラが故障中で……」
ふーん…「ちょうど」、ね……。
それに、近江研究室はモニターしなくてもいい、と。
やっぱり、ナットクいかないなあ。
で、この隙に犬山さんご一行は見逃されてしまい、そして翌朝の惨劇。犬山さんとお酒を酌み交わす時のディックさんを見られなかったのはちょっと残念です…。でも、偶然見逃されてまんまと侵入を許し、犬神さまも目的(そう、目的)を遂げたら消えるというあたり、やっぱり作為的なものを感じますね。
犠牲になったのが、まず通りすがりの人とかじゃなくていかにもな「すけべじじい」や「そのスジの方がた」だったのには、客観的に安心してしまいました。犠牲者への同情心などをヌキに、犬神さまの今の状態と一緒にアレっぷりを落ち着いて(?)再確認できましたし。作品が変わってもやはり凄まじいですね。およそ人間が太刀打ちできるような相手でないことが、読むたびに今さらのようによく解ります。
今までも充分に酷かったですけど、これからはそれ以上に酷い事になっていくはずで……いい人ややさしい人たちも犠牲になり、何の関係もない人たちまでもがたくさん屠られるのかと想うと――……。
ディックさん、どうか早く、事件を解決してください…!!
――で、その、当のディックさんはといえば。
いつの間にか佐々木さんとお友だちになってしまってましたけど、タクシーの運転手さんに続いて佐々木さんまでおかしなことになって、しかもばっこんばっこん事故りまで――ほらね、ああなっちまう!――間一髪で惨事からはまぬがれましたけど、ヘタすれば大事故ではすまなかったはず。……そう考えると、薄ら寒いものが背筋を走ります。
でも、「呪われた地」でここまで呪われてしまうといいかげんいやになるのが常なんでしょうけど、ディックさんはいやになりながらも、それでもまだ立ち向かっていくんですね。そのタフガイっぷり、心から尊敬します。
ところで佐々木さんからは、その近江局長が魔術師という情報まで出てきましたし(しかも所属はあのO∵D∵T∵!!)、学園都市に至る道路――棺桶道路にも小細工が仕掛けられていたそうで、いよいよ陰謀と魔術の気配が濃厚になってきましたね。被疑者どころかもう充分な容疑者ですよ。
――ふとおもったんですけど、近江の(←呼び捨てとる)名前って、「近江泥棒伊勢乞食」から取られたのでしょうか。イエ、こずるい奴みたいですから、なんとなくそうなのかなあと。
でも、おふたりともとりあえずは無事でよかったです。佐々木さんも飲み屋さんに顔を出すころには、三波さんと渡り合えるくらいには復活しているみたいでしたし(笑)。
翌朝。
朝一番でどんな凶報が入るのかとグッタリしそうになりましたけど――
あ、あれ…? めずらしく何もナシ…??
イエ何事もない方がそれはもちろんいいに決まってるんですけど。でも…おかしい。黒犬獣が人を襲わずに失せるなんてまずないですよね…。今サラ「集団幻覚」なんてありえないし、パフォーマンスなんて必要もないし。とまれ、先の犬山さんご一行の件と比較してみると、この点がまず違いますよね。あ、あと違いといえば、乾さんが……こほん、いたしてたのが、近江ではなくディックさんだった、というくらいでしょうか。
じゃあ今回は出現するだけに終わったのは、乾さんの体験したのが魔術的儀式じゃなくて、ええとその、つまりいわゆる「和姦」だったから…? それとも警備カメラに映っていたあの日あの時あの行為は性魔術の儀式だったとか…。
ところで虹子さん、次から次へとディックさんにお役立ちですね。
旅立ち前には雑誌を手渡し、電話で訊けば黒犬獣について調べ、頼めば『魔法大辞典』を送ってくれたり。(←しかも、速達で!)
「虹子さ〜ん…」
「しょうがないなぁー田外ちゃんは〜」(ぱらららっぱらー)
……そんなまるでどこぞのネコ型ロボットじゃあるまいし!(笑) イエでも実際、虹子さんってスゴイ人だなあと想うです。占い師としてのカンとともに。
これは、ディックさん、おみやげのカニ缶は何があっても買わなくてはですよね(笑)。
そういえば黒犬獣についての解説は『魔犬召喚』にも出てましたけど、講釈師が専門家(?)であるせいか、前よりも関連事項が増えていましたね。重複している部分があっても、飽きずに読めました。
そして犬飼先生のもとを訪れるころ、近江の本日の講義と実験が始まったワケですが。実験の過程を見ているともう限りなくクロですね。こんな腐った性根をしたやつが人畜無害だったらヘソが茶を沸かしますよ!
…実は最初、「乾さん=地獄の乙女」説というのを考えていました。
乾さんがアレな事をされている時に限って現れるんだから、近江局長や手近な男をたぶらかしてそういう行為に及んでいる、とか。シケムくんのお姉さんみたいに、何か巫女としての能力・資質を持っていて、黒犬獣を召喚しては使役していたのかなあ、とか。事実、ESP能力者でしたしね。自分に危害を加えないのは、お嬢さまと番犬みたいなものだからかしら、とか。
……でも、それはないですね。自分が傷つく事で――自分を傷つけてもらう事で相手の心を満足させるなんて心の遣い方をしている乾さんにはまずありえないような。そもそも餌と見れば見境ナシに喰いまくる犬神さまを見れば、それはまずありえないことがよく解ります。(あいつアホだしなー)(←「あいつ」!?)
てことはやはり近江なのか。
佐々木さんの情報では精神病理学の研究と一緒にソッチ方面の事にも精通しているみたいだから、これまでの過程から観察すると彼奴はやっぱり性魔術師で、だったら乾さんはさしずめ、犬神さまを喚ぶために潜在能力を買われて仕立て上げられた巫女の役、ってトコかしら…?
ああまったく、これだから黒魔術師なんて嫌だよね! さっさと墓穴に入れって感じだよね!!
乾さんのESPを発展させて、肉体的精神的に追い詰められた時に黒犬獣を喚べるように彼女を飼い馴らすだなんて、とんでもない事するよ、ったく…。
実験、それも魔術儀式が重ねられたものにつき合わされ――んん? 乾さんが追い詰められた時に犬神さまが現れるって事は――……
げっ。……
まさか学園都市に犬神さま自らおいでになるとは……眼が合ったディックさんの驚きようは私なんかの比ではなかったと想います。
殺された犬たち、犠牲になった犬飼教授、飛び散った死体、そして黒犬獣――
捕まる 怖い 喰われる 犬 血 獣 化け物 逃げろ 死
――危険!! 危険!! 危険!!
それから起こった事は、もう凄まじいどころではありませんでしたね。引き込まれながら、想い詰めたようにディックさんを見守っていました。展開がとても迅速なものだったのと同時に、自分自身、何だか、書面から眼を上げればそこに黒犬獣がいるような圧迫感があって、ずっと眼が離せずにいました。
あの世への入り口が――黒犬獣の口が自分を呑み込む前に、ディックさん、幸い転がってきたドルメンのかけらに救われて、済んでのところで事なきを得ましたけど…だ、大丈夫なのでしょうか……。
今度黒犬獣が出現しようものなら虹子さんの占いがいよいよ的中してしまいそうで、そうならないように祈りつつ、戦々恐々としています……。
その黒犬獣もまだ不完全状態とはいえ、出現するたびに凶暴さも残忍性も度合いを増してきて。完全顕現が近づきつつある証拠ですね。ヤバい…ヤバいよ…!!
そして、疾風迅雷な出来事の後で――……。
まわりを見渡してみれば、うわあ何てひどい有り様ですか。
張本人の近江はといえば後始末もそこそこにものまね話芸(?)を披露し、乾さんと昼メロまがいの行為に没頭して。もう、唾棄したくなりますね。
そしてとうとう、犬丸さんまで……。
犬塚、犬山、犬飼ときて、これでとうとう4人目。これはもう、偶然ではないですね。この「犬」殺しにも、何らかの魔術的意味合いが含まれているはず。そこにどんな象徴が込められてるのかは、私には解らないけれど――。
その犬丸さんが犠牲者になってしまう数時間前。
佐々木さんと開かずの間で目撃したものは――!!
「黒犬獣を使役する大量殺戮」「奇構造の学園都市」「マンションの空き室」「瀬田寒という土地」「放置されたままの暗黒街」……この〈装置〉をなかだちに、すべてが直結していたんですね。こうして、一見何の脈絡もない、メインからは逸れているように想われていた出来事のピースが、ほんの数行ですべてかちりと嵌まり込む行には舌を巻いてしまいました。黒犬獣の騒動によって見えなくなっていた共通の意味が見え、俄然、興奮の度合いが増してきました。
でも、心の一方では、それどころではありませんでした。
人間生きてれば、誰だって喜怒哀楽、はしゃいで喜んだりもすれば、時には嘆いたり悲しんだり、不安になって恐怖を感じたりするのは当たり前で、みんなとても大切な心なのに、それを自分勝手な目的のために利用するなんて…。
不安材料をどんどん与えて、肥大させて。募りつのったそれらを吸い上げて。
こんなの、実験動物どころか、まるで飼い殺しの家畜じゃないですか……何て酷い事を…。
そうして集められた〈負の感情〉は、おそらく媒体である乾さんの一身に伝導されて……この場にいたらきっと、はらわたがちぎれそうな想いになっていたかもしれません。
そして浮かび上がった、謎の機関。
陸上自衛隊民族遺産管理室。――
ディックさんと佐々木さん、おふたりの調べ上げて持ち寄った材料が照らし合わされて、ついにひとつになるんですね。待ってました! 『魔犬召喚』の時もでしたけど、こういう「話し合い」の方法は何だか好きなのです(笑)。
ただ、ひとつ気になった事があるのですが。たしか警備用のテープって、5倍速くらいで録画されているから、一般の機器では再生できないと聞いたことがあるのですが……。
ま・まあ、細かいことは気にするねぃ、ってヤツですね(笑)。警備会社とかにもよるのでしょうし。
しかし…
ビデオのアレは見た途端「何事!?」とせきこんでしまいました。「魔術で映像をかき換えられた!!?」と(…ゲボ)。どうやら魔術師の悪趣味な冗談ではなく、13万の裏ビデオでもないみたいで安心しましたけど……。
でも、ほんとアセりました。見開きの効果もあって(苦笑)。
そして、とうとう実証されてしまったんですね。今回の一件における、乾さんの役割が。
彼女が性魔術の「道具」だった――説として持っていても、あまり考えたくなかった結果でした。
しかし、ディックさんの行動は、「実証」というよりは「暴露」に近いような。……
いくら「不器用」ってつけばカッコよく取られるような当世でも、ディックさんのとった方法はたいていの人はまず顔をしかめることと想います。でもディックさんは、こういう風にすることでしか証明ができなくて、当人や周りの人から誤解を受けたり、そしられることも承知で、ああした行為に及んで。
たとえ、乾さんに、残酷な事実を突きつけることになってしまっても。
ディックさんきっと、愛情とかではなくて、何ていうかもっと人間としての基本的な感情から、乾さんを救いたいと想って。
肩を抱いたとき、そんなディックさんのやさしさが、何だかとても愛しいものに感じられました。
ただ。
あー、ビデオ、やっぱりおしゃかになってしまったんですね…(痛…)。
いちどはそういう事態に遭遇してるんだから、黒犬獣が出てきたらどうなるのかそのあたりは想定しておいてしかるべきだと考えるのですが。それどころじゃない雰囲気にしたって、ちょっとせっかちじゃなかったか、と想わずにはいられないのですが。
もちろん、証拠提出を求められてハイそうですかと出せるようなものではないけれど……。
………。
……ディックさんのやり方にはやはり異を唱えるべき?(←何を今サラ)
まったく…「あらゆる魔術はすべてまったくの偶然と言う形で効力を発揮するものである」か……(うぬう)。
さらに、乾さんは行方不明、おまけに高部さんも凍死体になって発見されるなんて――。
折りしも近づく研究発表の日。うう、さらに酷い事が起きそうな予感がしてきましたよ…。
ただ、乾さんは少なくとも守れる余地があったのではないかと想うのですが。
だって、敵は予想以上にとんでもない相手――政府ぐるみで、警察を丸め込むほどの――と判っているんですから、多少の心配りは必要だと想うのですが。団体で行動するとか。(←例えそうでなくても、女性の夜の一人歩きは危険なのに…) コレはちょっと失策だなあ…、と想わずにはいられませんでした。
「田外です。……北海道に来てから、犬に好かれてしまいました」
「田外です。……逢って間もない左翼記者に梅毒病みと想われたとです」
「田外です。……いくらSFとSMをごっちゃにしても、ビデオとロデオは間違えません」
「田外です。……ススキノの煙が、眼にしみます」
イヤイヤそれどころじゃないから!(←てゆーか、何させてんだ)
――ディックさん、果たして本当に、無事に「生き」て「帰れ」るのでしょうか。
とうとう公開実験――近江との直接対決が迫ってきましたけど、その前に明かされたもうひとつの「解答」。犠牲者の名前などの犬がらみには、こんなウラがあったんですね。仏教で言うところの「偶然の一致」で済まされはしないだろう、と想っていたので、ようやく腑に落ちました。
そして、犬塚・犬山・犬飼・犬丸ときて足りない「犬」はどうするんだろうか欠員補充するのかしらとか想ってたら、何てご丁寧な…。犬池のおじいさんばかりか、よりにもよって権力のイヌですよ! イヌはイヌでも狗だよそんなさぶいギャグはいらないよ!! ギャグで殺されたSPはたまったもんじゃないっつうの!!
ああもう、何だかとんでもないことになってきてしまってますね。近江によって公開儀式の「場」は負の力で清められて、そこに黒犬獣が降って現れて。その近江はもはややる事なす事せくはらだしぶったまげキモいし。(←何つー表現…)
臨界点を超えてとうとう発狂してしまった乾さん。近江によって魔術道具に仕立て上げられた末、こんな事になるなんて……。
〈血と炎の供犠〉によって大量の生贄がセタ・サパハの黒犬獣に捧げられようとしている最中にあって、「好き……お願い、抱いて……」と抱きついてくるその弱々しい姿が、痛くて仕方なかったです。
乾さんをかかえた時、ディックさん、どんな気持ちだったんでしょう。
読んでいて、かかえる時に手に込められた力が伝わってくるような気がしました。……
しかし、ヒーローばりに登場するディックさんは、何だかカッコよかった…!(←はっきりと言い切らず「何だか」としているのがミソ)
炎のような怒りとともに、近江を文字どおり蹴飛ばして、歯すら叩き折って。その様がとてもよくイメージされるだけに、ディックさんのお姿がやたら強調されて仕方ありませんでしたin my 脳内。それに「一発逆転の秘策」が、単純だけど何かいいなあ(笑)。
「理性的なものだけが現実的だっていうぜ」
こんな下らない事はさっさと終わらせてほしい。――そう想いつつも。想いつつも。
チューインガムみたいにくちゃくちゃと近江の身体を噛みしだいている黒犬獣を想像して、恐怖すら恍惚に変わってしまう死に様の凄まじさに、身ぶるいせずにはいられませんでした。眼が離れませんでした。
その、最後の印象に……。
……。
乾さん、もとに戻れるでしょうか。健全な身体に戻れるでしょうか。……
苦しむ必要のない事に、あれだけ追い詰められてきたんですから、どうかまた、きっといつか、立ち直ってほしいです。
一応、まずは幕は閉じましたが、これはまだ、これから続いていく物語のほんの始まりなんですよね。
善しも悪しも見えないままの終わりから、やがて上がる第2幕。
「民族遺産管理室」とは何のための機関なのか?
そこにO∵D∵T∵はどう関わってくるのでしょう。
儀式前に電話をかけた「御前」とは何ものなのか? 彼らの大いなる目的は?
さまざまな謎をはらんだまま、物語は次の『天外魔艦』へ――。
活躍のメインがディックさんにしぼられるのは当然として、今回他にも登場してきた人・これから絡んでくる人たちも気になりますね。佐々木さんと三波さんは、またセットで登場してくれるのでしょうか…。会えばけんか腰なおふたりが見ていて好きなので!(笑)
虹子さんはアドバイザー役なのでしょうか? 今回は電話と記憶のむこうで脇役に終始してましたけど、自分も取材した近江の正体をディックさんから聞かされた時は、どんな反応をしてたのかしら? やっぱりクールなのかなあ。(←カンのいいお人ですから、うすうす察知していたのかも) 『神蝕地帯』はメイン話になりそうなので、その間にどういった役割を務めるのかも興味深いですね。
「御前」はきっと騎西十三郎だな。それこそ、アレキサンダー・メルクリウス級のヤツなんだろうなあ。
浜崎デスクは――……イエ、何でもありません。(←『虚空聖山』の笠井社長を想い出しました…)
都英さん、は――……ちょっと期待しすぎですか?(←イヤ、シリーズ違うし)
『魔犬召喚』の松井さん神波さんは、どこかで客演登場してくれるといいなあ。
「魔術戦士」以来のオカルト・シリーズなので、少しずつ楽しんでいこうと想います。