涌井紀夫
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わくい・のりお
出身
- 1942(S17)年2月11日生
- 兵庫県神戸市 / 京都大学 法学部卒(1964)
- 裁判官 [担当:民事/行政]
略歴
- 1966.4【24歳】 東京地方裁判所 判事補
- 1969.4【27歳】 最高裁判所 事務総局 刑事局付
- 1972.4【30歳】 旭川地方・家庭裁判所 判事補
- 1975.4【33歳】 東京地方裁判所 判事補
- 1976.4【34歳】 最高裁判所 事務総局 行政局参事官
- 1977.5【35歳】 最高裁判所 事務総局 行政局2課長
- 1979.7【37歳】 最高裁判所 事務総局 行政局1・3課長
- 1983.4【41歳】 東京高等裁判所 判事 職務代行
- 1984.4【42歳】 最高裁判所 事務総局 給与課長
- 1988.4【46歳】 東京地方裁判所 部総括判事
- 1992.6【50歳】 最高裁判所 上席調査官
- 1993.11【51歳】 最高裁判所 事務総局 総務局長
- 1998.1【55歳】 前橋地方裁判所 所長
- 1999.2【57歳】 東京高等裁判所 部総括判事
- 2001.2【59歳】 司法研修所 所長
- 2002.9【60歳】 福岡高裁 長官
- 2003.5【61歳】 大阪高裁 長官
- 2006.10【64歳】 最高裁判所 判事 (第一小法廷)
過去のおもな判決
- 東京地裁 民事部の裁判長として
- 1990/05/19
- 警察庁のモデルガン規制強化で、製造設備の廃棄をせまられ、ガン愛好家の楽しみが奪われたとする訴え → ×
- 1990/07/11
- 足立区長が議会開会中に、一部の議員を料亭で接待し、公費112万円を支出したのは不当とする訴え → × … 意見交換の場であり、社会通念上の儀礼の範囲内。
- 1991/05/23
- 夫婦同姓を避けるため、婚姻届を出していないカップルによる「住民票の続柄欄でわが子が『非嫡出子』とされて、結婚している夫婦の子と区別して記載されているのは、不当な差別だ」とする訴え → × … たしかに、就職や結婚の機会に、いわれのない差別的扱いが行われる例がある。 しかし、続柄の記載が住民票と戸籍とで異なってくる不都合もある。 法律上の家族の利益保護の観点から、区別にも合理的な根拠がある。
- 1991/09/17
- 練馬区役所の新庁舎が豪華すぎるので、建設工事をやめてほしいとする訴え → ×
- 1992/03/16
- 有罪判決(連続企業爆破事件)が確定する前の段階に、拘置所の中で岩波新書「ニーチェ」を読むことが許されなかったのは不当とする訴え → × … 不許可はいささか形式的に過ぎるが、やむを得ない措置。
- 1992/03/18
- 羽田空港に離発着する飛行機の音がうるさすぎるので、「新A滑走路」での離発着をやめてほしいとする訴え → × … 空港側が行っている業務の、何を取り上げて不当だと主張しているのか、よくわからないので判断できない。
- 1992/03/24
- インフルエンザの予防接種をめぐって、練馬区から区医師会に支払われた委託費に水増しがあったとする訴え → × … たしかに、実際に接種を行った医師や看護婦の数は、契約のもととなった算定基準よりはるかに少なかった。しかし、区と区医師会の間の契約には、算定基準通りの人員派遣を義務づけた規定はなく、水増しとはいえない。
- 1992/04/17
- 取材目的で拘置所にいる被告人と接見しようとしたところ、許可されなかったのは不当とする雑誌編集者の訴え → × … 原告は過去に「接見内容は公表しない」とする誓約書を提出していながら、別の被告人と接見した内容を雑誌に公表したことがある。よって、拘置所側が接見を無条件に許可しなかった判断には、合理的な根拠があった。
- 1992/05/27
- いわゆる「中国残留孤児」の日本人が、中国国籍を取得していたことを理由に日本国籍を抹消されたのは不当であるとする訴え → ○ … 自分の意思で中国国籍を取得したとは言えず、国籍法上、日本国籍は失われていない。
- 1990/05/19
- 東京高裁 民事部の裁判長として
- 1999/08/23
- 公立中学校の女子生徒が自殺したことをきっかけに、学校側が全校生徒に書かせた「命の大切さ」などをテーマにした作文の内容を、「作文に書かれている娘の個人情報」として、個人情報保護条例に基づき、見せるよう主張した父親の訴え → × … そのような請求権があることは認めるが、生徒の作文は遺族への公開を前提に書かれたものではない。開示されれば教師と生徒との信頼関係を損なう。
- 1999/12/22
- 市民団体が主催した「夏休み地球一周の船旅」について、週刊誌で「難民船のようで惨たんたるものだった」と報じられ、名誉を傷つけられたとする市民団体の訴え × … 記事は、参加者の不満感をやや極端に誇張したものに過ぎない。
- 2000/10/25
- 弁護人として担当した傷害事件の捜査報告書に、自分の所属政党などが書かれたのはプライバシー侵害にあたると主張した弁護士の訴え → ○ … 副検事が報告書を証拠資料として裁判所に提出したのは、軽率な行為でプライバシー侵害。ただし、そのような報告書を警察官らが作成したこと自体は、違法とはいえない。
- 2001/01/17
- 刑事事件として立件されなかった放火殺人につき、遺族が犯人だと主張する男性に対して、民事上の損害賠償を求めた訴え → ○ … 犠牲者の焼死は、男性の加害行為によって引き起こされたと推認することが、合理的で説得力がある。
- 1999/08/23
涌井は、民事裁判を「どちらが真実なのかを確定するものではなく、社会一般からみて常識的なのはどちらか、を判断する制度」と思っている。 だが現実には、当事者が真実の究明を求めたり、事実上の再審という重い役割を担ったりすることもある。 (読売新聞・連載記事「裁く」より 2001/04/15朝)
- 2001/07/04
- 茨城県の原発「東海第二発電所」について、安全性に疑問があるので設置許可を取り消してほしいとする訴え → × … 最新の科学技術水準に照らしても、当時の安全審査に不合理な点があるとはいえない。ただ、圧力容器の強度に関する予測評価は、最新の研究結果からすると不合理な点が出てきたようにも考えられる。
おもな持論
- 裁判官として心がけていることは、「予断を排除し、公正中立に判断すること」。「思うて学ばざれば則(すなわ)ちあやうし」という論語の一節を引きながら、「独り善がりの思い込みだけで判断せず、当事者の意見や外部の学識者などから幅広く学びたい」と語った。(読売新聞 2006/10/17朝)
- 「司法制度改革に伴う新たな課題に取り組むとともに、下級裁判所が適正な裁判を行えるよう、後方支援を行いたい」 「人間的な幅のある裁判官を育てていかなければならない」(読売新聞・大阪 2005/06/02朝)
- すべての裁判を2年以内に終結させることを目標とした裁判迅速化法について「日本の裁判は、平均値としては遅くないが、医療などの専門訴訟への対応が課題」と述べた。(読売新聞・大阪 2005/06/02朝)
最高裁判事になっての抱負
- 就任会見にて
- 「最高裁は最終審として非常に重い。裁判官の仕事を続けられることを光栄に感じつつ、気を引き締めて重責を担いたい」(読売新聞)
裁判員制度についての考え
- 大阪高裁長官 就任時会見にて
- 涌井長官は、裁判員制度への国民の参加意欲が高まらない現状について「審理の具体的な姿が見えていない。模擬裁判を繰り返し、広報活動を行うことで国民に浸透させたい」と話した。(読売新聞・大阪 2005/06/02朝)
- 最高裁判事 就任時会見にて
- 「国民に認識されてきたと思う」と評価した上で、「今後は、裁判員に選ばれた人の負担を少なくするため、休暇制度の充実や育児・介護の支援などを考える必要がある」と述べた。(読売新聞 2006/10/17朝)